茨城県水戸市のカツカレー

「しっかりな!こっちから電話でプッシュしとくから。水戸じゃせいぜいうまいもんでも食ってこいよ」

「そんな…俺はどうもあの田舎臭さが苦手なんだなあ。それより話変わるけど、滝山はいつもあの大学に行った時は何食べる?」

「うん!よくぞ聞いてくれました。生協の食堂で売ってるのはシロウト、あれはダメ。あのネ、近くの交差点に小さいビルがあるの。そこにピッチャーゴロというのがあるから、そこのカツカレー640円!!これしかない!」

「あった、ここかあ」

一階は飲み屋になっているらしい。
さすが滝山面白いとこ知ってる。
それにしても急な階段だ。

「シャッス。」
「ひとり…なんだけど」
「ハイ、ドゾ」

ちょっとこういう店は苦手だけど…たまにはこういうのもいいか。
なんだか古くさいな…学生の頃にこういう店に入ったことがあるような気がする。
15年くらい変わってないんじゃないかな…きっと。

ん、なにも言わずに水とおしぼりとメニューを置いていった。
しかしなんだか臭うおしぼりだなァ…手を拭くのをためらうよ

「すいませーん。」
「シャッス。」
「カツカレー、大盛りで」
「アッス。」

マスターはずいぶん腰を曲げているなぁ。
ずっと前からああなんだろうか。

「唐揚げのお客様ッ。」

うへーっ、あれは唐揚げかな。
ライスがずいぶんと盛ってある。
ちょっと盛りすぎだと思うんだよなァ。

またなにも言わずにスプーンを置いていった。
このマスター、無口なのかな。

「カツカレーッ。」
「あ、ハイ」

 


・カツカレー
溢れんばかりのライスの上に大きなカツが乗ったカレー。

・味噌汁
特筆するべきこともない具の少ない味噌汁。

・サラダ 
不揃いなキャベツの千切りにトマトが乗っている。


まずはサラダから。

もぐ

うわ…なんだこのトマトは。
柔らかいと言うか生暖かいと言うか…腐っているんじゃないか。
えぇい、サラダはやめておこう。


カツカレーはうまそうだ。
それにしてもこの溢れそうなルー。
大盛りにすりゃ良いってもんじゃないと思うんだけどな。

もぐ、もぐ。

うん!これ、これ!
…ってなにがこれなんだろう。
子供の頃おばあちゃんの家で食べたカレーかな。
そして揚げたての大きなカツ。
油っこくて、まるで油を食べているかのようだが、
マズくない!決してマズくないぞ!ああうまい!なんだか懐かしい味だ。

むしゃ、むしゃ。はふ、はふ、はふ。



あぁ、あっという間に食べ終わってしまった。
さて、味噌汁を飲んで帰ろうか。

「コーヒーッ。」
「え。頼んでいないですよ。」
「セットですッ。」

なるほど、料理にはコーヒーが付くのだろうか、さっさと飲み干してしまおう。
ごく。
「む。」
これは、コーヒーなのだろうか?
甘い、複雑な甘さだ。いや…スゴい甘さと言ってもいい。
俺は甘いものに目が無いとは言っても、コーヒーをここまで甘くするのはどうかと思うよ。
甘くて甘くて、もはやこれはコーヒーとは呼べないんじゃないかな。

「ごちそうさま。」
「ロッピャクユンジュウェンッ」
「ハイ、ちょうど。」
「シタッ。」

ふぅ、それにしてもスゴい店だった。
急な階段は降りるのも一苦労だ。

「 シ タ ー ッ 」



後ろでマスターの声が聞こえる。
変なマスターだったな。
あのカレー屋、と言うかあのマスター、どうなるのかなぁこの先。