水戸市袴塚のから揚げラーメン

納品のついでとはいえ、水戸なんて来るのは学生以来なんだよな、何年ぶりだろう
こんなんだったかなぁ…全然覚えていない
あの頃はつきあっていた彼女もいたっけか

その頃、俺はカメラに少し興味を持っていて、確か公園で彼女のモノクロ写真を撮ったんだったな。

「懐かしいな、長いコートを着ていたからシーズン・オフだったと思う」

あれはいったいどこだったんだろう…


でも地味だな…この国、いや、この街では何もかもが地味すぎる。
水戸ってこんな街だっけ?

だけどこの雰囲気、俺は嫌いじゃないな
細い国道に古い小さな店がこちゃこちゃと軒を並べているこの感じ…



さて、足が疲れた…どこかでなんか食べよう
どこに入ったものかな…

「ん?ラーメン…いいじゃないか、うん」




「ひとり…なんだけど」
「いらっしゃい」

なんだかレトロな内装だな…黒電話まで吊ってある
しかしこのテの店って…どうも苦手だな、やっぱり
なんか店員が客を見下ろしているっていうか…うん

「すいませーん、から揚げラーメン」
「あいヨ、そっちも決まった?」
「あ…こっちもから揚げラーメンください」
「あいヨ、そっちもから揚げラーメンね」
「あ……それとホリマチ餃子もつけて」

他の客に煽られて俺はから揚げラーメンなんて頼んじまった、そんなもの食べたことないぞ

「お客さん、初めて見るね」
「えぇ」
「どっから来たの」
「東京…」
「えっ東京か、わざわざこんなところまで。東京かぁ」
「…………」
「何しに来たの」
「仕事で…」
「仕事?何やってんの」
「その…雑貨を…」
「へぇ雑貨?お兄さん見た目に反して可愛い仕事してるのね」
「はぁ」
「なに、雑貨屋さん開いてるの」
「いえ、輸入を…」
「えっ輸入!雑貨の輸入だなんて珍しいねぇ」
「……」
「はい、まず餃子ね」
「……」

 

餃子は至ってシンプルなものである

はふ もぐ もぐ

うん、こういうタイプか

もぐ

なるほどうまいうまい

「お待ちどうさま」

ほー なんつーか…

まさに思ってた通りのものだなあ
からあげかあ…いいんだけどさあ…
「む」
これは思った通り…複雑な脂っこさだ

「こんちわー」
「いらっしゃい、教育実習終わったの」
「あ、そうなんですよ」

ズズー

しかし…からあげとラーメンってのは視覚的に最悪の組み合わせだな
味はまだしも


「くわ~ あつ~っ」

水戸は暑いって言うけど…これかァ。
「ふぅ…なんだかなぁ…」

帰ったらシャワーを浴び ひと眠りだ