リカちゃん

女「ショートコント。

男「原子物理。

女「ねぇ、電子くん。

男「やぁ。えぇと、君は…。

女「やだ、私の名前を忘れたの…?ヨウコよ。

男「あー、ごめん。始まって十秒も立ってないけどごめん、タンマ。あのね、それは確かにヨウコに読めるけど、今回はヨウシって読むの。

女「あーそうなんだ。

男「デンシは読めたのに、どうしてそこを間違えちゃうの?

女「だって、デンコになっちゃうでしょ。

男「あーうん。大人の事情で消えちゃったキャラになっちゃうね。

女「電気は大切にね!

男「こらこら。で、どうするの?早速読み違えてちゃあ、進まないよ、ショートコント。

女「うーん、いきなり原子物理学なんかに手を出したのが間違いだったのよ。

男「ほうほう。

女「だから次はあれよ、ナマモノでやりましょ。

男「違うよ。それはね、セイブツって読むんだよ。

女「じゃあ行きまーす。ショートコント、ナマモノ。

男「僕の話を聞いてた?

女「ねぇ、赤血球くん。

男「あぁ僕は赤血球なのね。それで君は…白血球?

女「酷い!私をあんな、なんでも食べちゃう怪物と一緒にするだなんて!

男「あれっ、白血球はいいやつじゃなかったっけ。それじゃあ君は誰?

女「わたし、インフルエンザウイルスよ!よろしくね!

男「白血球ー!敵じゃー!敵襲じゃー!戦じゃー!

女「べ、別に感染させに来たわけじゃ無いんだからねっ。ツンデレっ。

男「うん、それはツンデレって言わないしね、三次元の人間がやっても可愛くないの。

女「わたし、人間じゃなくてウイルス。

男「あ、うん。そうだったね。まぁウイルスがやっても可愛くないんだけど。で、感染させに来たんじゃないなら、何しに来たのさ?

女「わたしね、ずっとひとりぼっちだったの。友達いないの。

男「あらあら。それはそれは。

女「だからね、お友達を作りに来たの。

男「お友達って…僕とかい?

女「ううん、違うわ。私の仲間を増やしに体内に侵入しに来たの。

男「人、それを感染と呼ぶ!えぇい!白血球は!白血球はまだか!抗生物質は!抗生物質を寄越せぇ!

女「ひ、酷い!私はセイブツとしても認められない、か弱い存在なのに…。

男「えっ。

女「それを人間の勝手で駆逐しようとするだなんて!最低!人間は悪魔よ!人殺し…じゃないや、ウイルス殺し!

男「いや、人間もウイルスに殺されることもあるからね、お互い様だと思うよ。なんで悪魔呼ばわりされなきゃいけないのかな。

女「ちょっとタンマ。

男「え、何?

女「赤血球っぽくない。

男「は?

女「赤血球はそんなヤツじゃない!

男「いやいや意味分からないよ!そんなこと言ったら君のインフルエンザだってわけがわからないよ!

女「あーもう、やっぱりいきなりナマモノなんかに手を出したのが間違いだったのよ。

男「セイブツね。

女「だから今度はあれよ、一番メジャーなバケガク。

男「バケガクゥ?

女「君は水素くんね、私は酸素ちゃんをやるから。

男「ちょ、ちょっと待ってよ。

女「ショートコント。

男「…バケガク。

女「ねぇ、水素くん。

男「なんだよ、酸素ちゃん。

女「あたしのこと、好き?

男「何を言っているんだよ、当たり前だろ。

女「ふぅん。──本当に?

男「本当だってば。二人の愛は固ーく──

女「固く水素結合で結ばれています…って?

男「う、うん。そうだよ。僕が好きなのは酸素ちゃんだけさ。

女「──いつからそんな悪い子になったの?

男「え?

女「いつからそんなウソを付くような子になっちゃったのかって聞いてんの。

男「い、いやぁ。そんなウソだなんて。

女「じゃあ。炭素ちゃんのことは愛していないっていうの?

男「ぎくっ。ななな、なんのことだい?

女「私ね、見ちゃったの。水素くんが、炭素と一緒になってメタンになっているところを。

男「見てた…の?

女「えぇ見させてもらったわ。随分よろしくやっちゃってくれて。どういうつもりかしら?

男「ま、まずい!酸素ちゃんの嫉妬の酸化還元反応が始まった!

女「なんで。どうしてよ。あんなガングロ女のどこがいいのよ!

男「ガングロ女なんて言うなぁ!アイツは磨けばダイヤモンドのような輝きを…ハッ!

女「やっぱり。私のことなんて好きじゃなかったのね。愛していたのは炭素だったのね!

水素くんのバカ!もう知らない!

男「そそそ、そういう酸素ちゃんだって!僕と出会う前は色んなやつを酸化していたっていうじゃないか!

女「水素くんだって色んなやつを還元してたんでしょ!変態!水素くんのH!

男「Hじゃねえ──いやHだけど!お前それが言いたかっただけだろ!

女「どうも。

男「ありがとうございましたー。